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ベストエフォート値とは?ポケットWiFiのベストエフォート値と実測値の比較

「このネット回線「下り最大1Gbps出る」って書いてあるのに実際に使ってみたら全然速度が出てない」なんて経験をした人は多いのではないでしょうか。

 

実際のところ「下り最大1Gbps」とあっても実際に使うときには100〜200Mbpsぐらいしか出ていないことがほとんどです。ただ、「1Gbpsの高速通信が可能!」と書かれてあると期待してしまいますよね。

 

これはどのような仕組みになっているのでしょうか。その秘密を解く鍵となる言葉が「ベストエフォート」という言葉です。ネット回線の注意書きのところに小さく記載されているのを見たことがあるかもしれません。

 

今回は「ベストエフォート」とはどんな意味なのか?どのようなサービスなのかを解説していきます。

 

 

ベストエフォート値とは?

まず「ベストエフォート」は英語に直すと「best effort」となります。「best」は「最大限」、「effort」が「努力、奮闘」という意味があります。これをインターネット回線に当てはめて解説すると「最大限の努力によって提供される通信速度」という意味です。

 

つまり、いくら「下り最大1Gbps」と書いてあっても、これらはあくまで技術上/理論上の最大速度に過ぎず、普通に利用していてベストエフォート値の速度が出る事はまずありません。

 

よく光回線やWiMAXなどの商品/サービス説明ペーシを見てみるとこのような表現がなされています。

 

「auひかり」の表記

『※1個人宅向けFTTHサービス市場の上り/下り速度で世界最速1位タイであり、auひかり ホーム10ギガが対象です。【2018年12月付けOvum調査報告に基づく】本サービスはベストエフォート型サービスです。』
https://www.au.com/internet/auhikari_1g/?bid=in-in-intop-0014

 

「UQ WiMAX」の表記

『本サービスはベストエフォート型サービスです。記載の速度は技術規格上の最大値であり、実使用速度を示すものではありません。エリア内であっても、お客さまのご利用環境、回線の状況等により大幅に低下する場合があります。通信速度は機器の能力に依存します。』
https://www.uqwimax.jp/wimax/products/w06/

 

これを要約すると「確かに下り最大1Gbpsみたいなことは書いてあるけど、あくまで理論上で一番速い通信速度で、実際に使うときにはそれなりに下がります」と言っています。

 

公式サイトに記載されている最大速度は理論値であり、それを保証するものではありません。

 

これが「ベストエフォート」の意味となります。なので、実際に利用することを考えるのであれば、「最大速度」よりも「実測値」を重視しなければなりません。そして個人向けに提供されているインターネット回線のほぼ全てが「ベストエフォート型」です。加入を検討しているときに最大速度にばかり目を奪われないように注意しましょう。

 

ベストエフォート型とギャランティー型の違い

インターネットサービスの多くが「ベストエフォート型」で提供されています。ただ、その他にも異なるサービス形態が存在します。それが「ギャランティー型サービス」です。

 

「ギャランティー」とは英語で「guarantee=保証」という意味です。「ギャランティー型サービス」というのは「ネット回線の通信速度を”保証”する」という内容を表します。「ベストエフォート型」では、記載されている最大速度は理論値で、実際に利用する際の通信速度は”保証されません”。

 

一方「ギャランティー型」では、どのような環境であろうと一定の通信速度は”保証してくれる”サービスとなります。(例:いつ利用しても100Mbps以上は保証される、など)

 

通信速度を保証してくれるなら、「ギャランティー型」の方がいいのでは?と思ってしまいますが、「ギャランティー型サービス」は基本的に企業向けであり、個人向けで利用するのは現実的ではありません。

 

ギャランティー型のインターネットサービスは高額

理由としてはまず「利用料が高額」という点です。どんな状況でも通信速度を一定以上保証するというのはかなりのコストを要します。

 

インターネットを道路に例えたりもしますが、「ベストエフォート型」は「みんなで同じ道(回線)を走っている状態」であり、渋滞していれば進むのも遅くなります。

 

それに対して「ギャランティー型」は一定の速度を保証可能な専用の道路を走っているようなもので、そういった専用道路を作ったり、利用するにはかなりのお金が必要なことはイメージしやすいでしょう。

 

そのため、一般的に「ギャランティー型サービス」は企業向けに提供されています。通信回線が途絶えると多大な損害を被る可能性がある事業を行なっている企業の場合、たとえ通信速度の保証にコストがかかっても、それを上回るリスク回避というメリットがあります。

 

個人が利用することを考えると「ギャランティー型」は高額で現実的ではなく、ほぼ全て「ベストエフォート型」を選択することになります。

通信速度 費用 利用者
ベストエフォート型 保証されない 低額 個人向け
ギャランティー型 保証する 高額 ビジネス向け

各端末ごとのベストエフォート値、実測値、Ping値

「ベストエフォート型」と「ギャランティー型」の違いがわかりました。そして、個人向けのネット回線ではほぼ全てが「ベストエフォート型」となっています。となると、通信速度が保証されない中で快適に利用できるネット回線を選ぶ必要があります。

 

ここでは「みんなのネット回線速度(https://minsoku.net/)」という各回線の利用者が通信速度を計測、投稿し、サービスごとの平均値を算出してくれるサイトを参考に、ポケットWiFiの実測値やPing値をまとめていきます。

 

ベストエフォート値で記載されている最大速度に対して、実際に利用する際にはどれほどのギャップがあるのかを確認していきます。

ベストエフォート値 実測値(下り平均速度) 実測値(上り平均速度) Ping値
W06(WiMAX) 1.2Gbps 39.16Mbps 3.79Mbps 93.48ms
W05(WiMAX) 440Mbps 30.04Mbps 3.79Mbsp 85.18ms
D1(どんなときもWiFi) 150Mbps 24.72Mbps 3.5Mbps 66.54ms
FS030W(fuji wifi) 150Mbps 16.65Mbps 9.08Mbps 154.63ms
Pocket WiFi 603HW 612Mbps 26.73Mbps 3.36Mbps 89.84ms

※2019年10月10日時点(https://minsoku.net/speeds/mobile_router/services)

  • 「下り速度」:ダウンロード速度
  • 「上り速度」:アップロード速度
  • 「Ping値」:サーバーとの応答速度(ms=ミリ秒)※数値が低いほど速い

こうやって一覧で比較すると各サービスの特徴が良くわかります。

 

WiMAXは「W06」という機種で下り最大1.2GbpsというポケットWiFiにしては破格の通信速度を実現しました。しかし、実際に利用する際に発揮されているのは40Mbs程度とかなりのギャップがあります。

 

それでも他のWiFiと比較すると一番実測値は高いのですが、これをみる限り「ベストエフォート値」を間に受けない方がいいということはわかります。それでも表をみる限りベストエフォート値が高いほど、実測値も高くなる傾向にあることが伺えます。

 

実測値を測定できるサービス

では、今ご自身が使われているネット回線の実測値を計測してみましょう。ウェブ上にはさまざまな通信速度計測サービスがあります。これらを利用して通信速度を計測することで、今使っているインターネットが速いのか/遅いのかが確認できます。

 

ここでは実測値を測定できるサービスをいくつか紹介していきます。

 

@Radish

株式会社Studio Radishが提供している通信速度計測サイトです。異なる地域に測定サーバーを設置しており、回線ごとの計測結果を表示させることができます。

 

「Radish」
http://netspeed.studio-radish.com

 

ABNRスピードテスト

「測定する」をワンクリックするだけで下り/上り両方の通信速度を計測できます。簡単に使えるという点でおすすめです。

 

「BNRスピードテスト」
https://www.musen-lan.com/speed/

 

BWild Speed

こちらのサービスは光回線業者などが通信速度の調査で利用することでも知られており、測定精度の高さに優れています。自宅の郵便番号を入力し、「測定開始」をクリックするだけで計測結果が確認できます。私はWild Speedと後述の「みんなのネット回線速度」を使う事が多いです。

 

「Wild Speed」
http://wild-speed.jp/netspeed/index.html

 

Cみんなのネット回線速度

ポケットWiFiの実測値比較でも使用した「みんなのネット回線速度」。こちらでは回線タイプやプロバイダ、地域、住宅、接続方法など細かい情報を設定した上で通信速度を計測してくれます。

 

さらに測定結果を投稿でき、サイト内で同じサービスを利用している人の平均速度を算出してくれるので、これを参考にすることもできます。

 

「みんなのネット回線速度」
https://minsoku.net/

 

インターネットの利用用途別の必要速度

「ベストエフォート値」や「実測値」などについて理解ができたのではないでしょうか。しかし、肝心な部分が抜けています。それは「ネットサービスを快適に利用するために必要な通信速度はどれぐらい?」という点です。

 

いくら実測値が確認できても、その上でどのサービスが快適に使えるのかまではわかりません。また、ウェブ閲覧や動画視聴、メール、ゲームなどサービスによって快適に利用できる通信速度は異なります。

 

ここでは利用用途別に必要となる通信速度を確認していきます。

利用用途 快適に利用できる通信速度
電子メール 1Mbps
サイト閲覧 1~5Mbps
動画視聴(フルHD) 3~6Mbps
動画視聴(4K) 25Mbps
オンラインゲーム 2~3Mbps


これを見ると明らかなようにネットサービスを快適に利用するためには、それほどの通信速度は必要ないことがわかります。

 

ただ、オンラインゲームなどはゲームのジャンルによってもっと通信速度(特にPing値)が必要なケースもありますが、それでも快適に利用するためのハードルはそこまで高くないことが伺えます。

 

ネット回線によっては通信速度を低めに設定し、料金を抑えるプランも用意されていることがあります。自分がどのような用途でインターネットを利用するかを考えて、必要なサービスに加入しましょう。

 

 

 

 

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