ビームフォーミングとは?ビームフォーミングの原理、効果とデメリット
ネット回線やモバイルWi-Fiを選ぶ際、月額料金や通信速度のスペックに注目することが多いですが、じっくりとサービス内容を確認してみると聞き慣れない言葉が数多く出てくることに気がつきます。
その1つが「ビームフォーミング」です。WiMAXの製品ページを眺めてみると必ず記載されている「ビームフォーミング」とは一体何なのでしょうか。
今回は「ビームフォーミング」とは何か。原理や効果、対象となる機種を詳しく解説していきます。
ビームフォーミングって何?
まずは聞き慣れない言葉「ビームフォーミング」とは何かについて理解していきましょう。
ビームフォーミングをザックリ説明すると「無線通信を行うために使用する電波の放射技術」を指す言葉です。ビームフォーミング技術によって。より安定かつ高速なネット通信が実現されます。
では、ビームフォーミング技術はどのような原理で成り立っているのか。そして、ビームフォーミングの具体的な効果についてみていきましょう。
@電波をピンポイントで発射!ビームフォーミングの原理について
「フォーミング(forming)」とは「成形する」などの意味を持つ言葉です。要は「ビームを成形して放射する技術」を指します。
一般的にモバイルWi-Fiといった電波を飛ばす端末は、360°全方向に電波を放射します。これによって範囲内にあるスマホやタブレット、パソコンといった受信機器が電波をキャッチし、インターネットに接続できるという仕組みになっています。
しかし、この方法ではモバイルWi-Fiから受信機器まで繋がっている電波の経路以外は無駄になっていると言えます。360°均等に電波を飛ばしているが故に飛ばしっぱなしで使われない電波が存在しているというイメージです。
そこで送信端末(ex:モバイルWI-Fi)から受信端末(ex:スマホ)に向けて電波を集中的に発射するというのがビームフォーミング技術になります。
受信端末の位置を特定し、そこに向けて「成形された電波」をピンポイントで飛ばすことによってより安定かつ高速なネット通信を実現することができます。
イメージ的に近いのは、従来のものが「普通のスピーカー」で、ビームフォーミングは「指向性スピーカー」といったところでしょうか。指向性スピーカーも特定の方向や距離など狭い範囲にいる人に音を届けるという仕組みです。
このような感じでビームフォーミング技術が無線通信技術をより便利にしています。
A通信の安定化に貢献!ビームフォーミングの効果について
ビームフォーミングが搭載されることでより安定した通信が可能となります。そして、通信速度の向上や通信距離の拡大にも繋がります。
具体的な数値としては、ビームフォーミングが搭載されることによって通信速度が最大約20%向上すると言われています。
「ビームフォーミング技術とは」
https://www.uqwimax.jp/wimax/products/wx04/beamforming/
これまでモバイルWi-Fiなどの無線通信端末は家の中でも部屋によって通信が途絶えるなどの弱点を抱えていました。
ビームフォーミング技術が搭載されたことで端末に応じて電波をピンポイントで狙い撃ちするので、高強度の電波が送信され安定した通信を実現します。
BモバイルWiFiやスマホ、カーナビ、スピーカー、マイクに応用されるビームフォーミング機能
ビームフォーミング技術は何もモバイルWi-Fiに限った話ではありません。無線通信だけではなく、音声認識技術などにも採用されています。
ローム株式会社では、スマホやカーナビに搭載されるマイク向けのデジタル信号処理半導体LSIにビームフォーミング技術を取り入れ音声品質の向上に貢献しています。「スマホやカーナビなどのマイクに鋭い指向性を持たせることで音声をクリアにするデジタル信号処理LSIを開発」
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2012-09-26_news&defaultGroupId=false
また、最近ではスマートスピーカーにもビームフォーミング技術が取り入れられています。利用者から発せられる声のみを集中的に認識するためにビームフォーミングを搭載しているモデルも販売されています。
ビームフォーミングに対応しているWiMAX端末
ビームフォーミングについて大まかな理解はできたと思います。次は実際にビームフォーミングが搭載された端末を使っていくことを想定した内容に入っていきます。
ビームフォーミングの恩恵を分かりやすく受けられるのがモバイルWi-Fiです。電波を集中的にピンポイントで送信することでスマホやタブレットなどの無線通信でも安定したネット利用が可能になります。
ビームフォーミング機能を搭載しているWiMAX端末としては下記の通りです。
モバイルWi-FI
Speed Wi-Fi NEXT W06https://www.uqwimax.jp/wimax/products/w06/
Speed Wi-Fi NEXT WX05https://www.uqwimax.jp/wimax/products/wx05/
Speed Wi-Fi NEXT WX04https://www.uqwimax.jp/wimax/products/wx04/
ホームWi-Fi
Speed Wi-Fi HOME L02https://www.uqwimax.jp/wimax/products/home_l02/
WiMAX HOME 01https://www.uqwimax.jp/wimax/products/home_01/
現在ラインナップされているモデルに関しては、ほとんどがビームフォーミングに対応しています。ただ「Speed Wi-Fi NEXT W05」「Speed Wi-Fi HOME L01/L01s」の2機種はビームフォーミング非対応なので注意しましょう。
受信側もビームフォーミング対応機種でなければいけない
ビームフォーミングを利用する上で頭に入れておかなければならないのは、送信側の端末だけではなく、受信側もビームフォーミングに対応していなければなりません。
例えば、ビームフォーミング対応の「Speed Wi-Fi NEXT W06」から電波を送信した際には、ビームフォーミングに対応しているスマホで受信しないと効果を得ることはできません。
「親機」「子機」ともにビームフォーミングに対応している必要があるのですが、そうなると気になるのはiPhoneやAndroidのスマホでビームフォーミングに対応している機種はどれかです。
ここではビームフォーミング対応のスマホやタブレットの機種を紹介していきます。
@ビームフォーミング対応のiPhone
Apple製品の中でビームフォーミングに対応している端末は以下の通りです。
【スマホ】
- iPhone11/Pro/Pro Max
- iPhone XR/XS/X
- iPhone8/Plus
- iPhone7/Plus
- iPhoneSE
- iPhone6/6s/Plus
Apple製品のスマホではiPhone6以降に発売された機種でビームフォーミングに対応しています。
Aビームフォーミング対応のAndroid
Android端末では以下の機種でビームフォーミングに対応しています。
- Xperia X Performance
- Galaxy S7 edge
- GALAXY S4
- AQUOS ZETA SHV32/404SH/SH-03G
- Nexus 9
- arrows NX F-04G
- arrows NX F-02H
Android端末はメーカーによって対応機種がまちまちな印象ですが概ね最新機種ではビームフォーミングへの対応が行われています。
BビームフォーミングEXなら非対応のスマホでも利用可能
ビームフォーミングという技術を各社ブラッシュアップさせることでさまざまな機能向上を図っています。その中で登場したのがBUFFALO(バッファロー)が開発したWi-Fi高速化技術「ビームフォーミングEX」です。
これによってさらなる高速化・安定化を実現し、電波の届きにくい障害物が多いような場所でも快適にインターネットが利用できるようになりました。
さらに、受信端末もビームフォーミングに対応していなければならないとい問題に対して、ビームフォーミングEXはiPhone5/5s/5cなどのビームフォーミング非対応機種でも利用することができます。
バッファローがiPhone5sを使った実験ではWi-Fiの通信速度がビームフォーミングEXによって約150%も向上したそうです。ビームフォーミングをさらに幅広い機器に対応させることができる優れものです。
対応Wi-Fiルーター
- WXR-1900DHP3
- WXR-1901DHP3
- WXR-1900DHP2
- WXR-1750DHP2
- WXR-1751DHP2
- WXR-1750DHP
- WSR-2533DHP
CビームフォーミングZとは?
ビームフォーミングZはELECOM(エレコム)が開発したアップグレード版です。信号強度の引き上げ効率化によってWi-Fiスピードを2倍にまで向上、3階建ての住宅でも難なく電波が届きます。
こちらも通常のビームフォーミングに対応していない機種であっても、次世代規格「Wi-Fi6(11ax)」に対応している端末であれば利用できます。
対応Wi-Fiルーター
- WRC-X3000GS
- WMC-DLGST2-W
- WRC-2533GST2
- WRC-2533GS3シリーズ
- WRC-2533GST
- WRC-1167GST2
- WRC-1167GS2-B
- WRC-1167GHBK2-S
- WMC-M1267GST2-W
- WRC-1167GHBK-S
ビームフォーミングにデメリットはあるの?
これまでビームフォーミングがいかに優れたテクノロジーであるかを強調してきましたが、デメリットがないわけではありません。ここではビームフォーミングの弱点をみていきましょう。
@親機・子機共にビームフォーミング対応機種でなければいけない
ビームフォーミングでは受信端末の位置を特定し電波を飛ばす仕組みであるため、送信端末、受信端末共にビームフォーミングに対応していないと利用できないというのは難点です。
モバイルWi-FIや無線ルーターといった親機はすぐ手に入るかもしれませんが、ビームフォーミング対応のスマホやタブレットに関しては揃えるのが難しい人もいるでしょう。導入ハードルが少し高いというのがデメリットです。
ただ、ビームフォーミングEXやビームフォーミングZなど非対応機種でも使える無線ルーターもあります。
A建物や障害物によっては電波が入りにくいことも
電波を集中的に飛ばすことによって安定かつ高速な無線通信を実現するビームフォーミングですが、それでもやはり建物の構造や端末の位置関係、障害物によっては期待されるパフォーマンスを発揮できない場合もあります。
こればかりはしょうがない部分もありますが、購入前にどのような状態で使用するかをシミュレーションしておくといいでしょう。
第5世代移動通信システム「5G」にもビームフォーミングが組み込まれる
これまで以上に高速かつ大容量、多接続、リアルタイム通信などを実現する第5世代移動通信システム(通称:5G)。5Gの登場によって、インターネットやさまざまなコンテンツ、サービスなどが大きく変化しようとしています。
そんな5Gに関して、ビームフォーミング技術は、電波を特定方向の利用者に飛ばすことに貢献し、より遠くにいるユーザーにも快適なネット通信を実現します。
さらに、利用者が移動した際はビームトラッキングという技術によって、電波を飛ばす方向を調整します。
自動車で移動するユーザーに対して、基地局を切り替えながら電波を飛ばし続けることにも成功しています。
このようにビームフォーミングは未来のテクノロジーを担う重要な存在でもあります。これを機に覚えておくといいでしょう。
「KDDI 5Gを支える技術」
https://www.au.com/mobile/area/5g/gijyutsu/
【まとめ】ビームフォーミングは高速安定通信を支えるテクノロジー
ビームフォーミングは無線通信をより安定かつ高速に行うためのテクノロジーです。普段何気なく使っているモバイルWi-Fiやスマホが快適に使えているのもビームフォーミングのおかげといえます。